概要
ロジックアナライザについていろいろ調べていたので、一旦まとめてみました。実際のところ、無いと不便ですがちょっと高いので手が出にくいですよね。
ロジックアナライザとオシロスコープの違い
ロジックアナライザは主にデジタルデータの変化を測定する機材です。オシロスコープはアナログデータの変化を測定する機材です。とはいえ、ロジックアナライザでもアナログ測定できるものもありますし、オシロスコープでもデジタルが測定できるものがあります。
ざっくりと信号の変化を全部記録して確認する場合にはロジックアナライザが便利です。繰り返す信号をリアルタイムで確認するのはオシロスコープが便利です。
実際のところ、電子工作で基板を自作する場合人はオシロスコープが必要ですが、それ以外の場合にはアナログ対応のロジックアナライザで十分な場合が多いです。
信号について
プロトコル | 周波数 | チャンネル |
UART(MIDI) | 31.25Kbps | 2 |
PWM | 1.2Kbps~312.5Kbps | 1 |
UART(RS-232C) | 300bps~1.5Mbps | 2 |
I2C | 100KHz~400KHz | 2 |
CAN | 10Kbps~1Mbps | 2 |
USB 1.1 | 12Mbps | 2 |
SPI | 1MHz~80MHz | 4 |
USB 2.0 | 1.5Mbps~480Mbps | 2 |
パラレル | まちまち | 8(4-16) |
ロジックアナライザやオシロスコープを選択する場合に重要なのはチャンネル数と対応周波数です。上記がざっくりとよく使うプロトコルの一覧になります。通常の電子工作ユーザーですとI2Cなどをよく使います。この場合2チャンネルで400KHzぐらいまでの比較的低速なプロトコルとなります。高速なものはSPIでして、4チャンネルで数十MHzになります。
USBは多くの場合速度が早すぎて個人では手がでないと思います。WiresharkのUSBPcapなどを使うことが一般的な気もします。
デバイス | 動作周波数 |
M5StickC(内蔵パネル) | 80MHz |
ILI9341 | 40MHz |
ILI9486 | 27MHz |
ILI9481 | 16MHz |
SD(デフォルト値) | 4MHz |
さて、上記がSPIで使われている通信速度の一例です。ESP32の場合には内蔵画面の場合には80MHzなどの高速動作が可能ですが、自分で配線をした場合には40MHzやより低い速度でしか安定しません。SDカードの場合には4MHzとかなり低速です。
ロジックアナライザやオシロスコープで信号を計測する場合には、目標となる周波数の3倍から10倍程度が必要と言われています。
つまり100MHzのオシロスコープの場合10MHzから33MHzぐらいまでの信号を測定することができます。I2Cの場合には400KHzですので1.2MHzから4MHzぐらいは必要になりますね。
チャンネル数ですが、最低でも2チャンネルですが、できれば4チャンネルぐらいはほしいです。パラレル転送の場合8チェンネル+制御信号で16チャンネル必要な場合がありますが、必要になる人はかなり限られると思います。
アナログ対応ロジックアナライザ(万能型)
価格 | 型番 | アナログ | 帯域 | デジタル | 帯域 | 備考 |
120,000 | Logic Pro16 | 16ch | 50Msps | 16ch | 500Msps | アナログ対応16chロジアナ |
84,280 | Logic Pro8 | 8ch | 50Msps | 8ch | 500Msps | アナログ対応8chロジアナ |
48,500 | Logic8 | 8ch | 10Msps | 8ch | 100Msps | アナログ対応8chロジアナ |
45,000 | Analog Discovery 2 | 2ch | 30MHz | 16ch | 100Msps | 16chロジアナ+2chアナログ |
20,100 | ADALM2000 | 2ch | 100Msps | 16ch | 100Msps | 16chロジアナ+2chアナログ |
5,749 | LHT00SU1 | 1ch | 3MHz | 8ch | 16Msps | 8chロジアナ+1chアナログ |
万能型のロジックアナライザの紹介です。アナログ対応のロジックアナライザになります。
Saleae社のLogicシリーズが一番有名で、アプリなどもかなり使いやすいと思います。とはいえ値段的にはちょっと手が出にくいですね。性能的にはピカイチなのですが、どちらかというとプロ用の機材です。また、Logic8の場合は8チャンネルあって、全チャンネルアナログとデジタルが同時利用可能です。
すべての機材に共通していますが、帯域などに関してはチャンネル数によって上限が下がります。Logic8の場合3チェンネルまで100Mspsで、それ以上のチャンネル数では下がっていき、8チャンネルの場合には25Mspsになります。Logic Pro16でも4チャンネルまで500Mspsでそれ以上は100Mspsになります。このへんの情報はデータシートやマニュアルなどのすぐに出てこないところに書かれているので注意してください。
※追記 Twitterでディスカウントが可能との情報を教えてもらいました。
上記に詳細がありましたが、特別なフォームでリクエストすることで安くしてくれるようです。ただしアメリカからの直接購入になると思いますので、日本でのサポートは受けれません。
Analog Discovery 2はまさに万能ツールでいろいろなことができます。どちらかというと学生向けのオールインワンのツールとなります。とりあえずこれを持っていれば大抵の用途では問題ないと思います。
- 高機能アクティブラーニングモジュール ADALM2000(秋月電子)
ほぼ同じスペックなのに半額ぐらいの機材もあります。こちらのほうが情報は少ないので使うのはちょっと大変かもしれませんが、安く手に入ります。ソフト自体はAnalog Discovery 2の方がお金がかかっているのか直感的に感じました。
上記が私おすすめの機材です。アナログが1チャンネルと、デジタル8チャンネルで性能的にはかなり低いですが、値段の桁が違います。
上記で紹介していますが、AliExpressなどで購入すると3週間ぐらい届くまでかかりますが3千円ぐらいで手に入ります。個人的にはこれをメインで使っていて、性能が足りない場合にはオシロスコープを使っています。
I2CやSDカードの低速モードぐらいであればこれでもなんとか利用できると思います。
オシロスコープ(デコード付き)
価格 | 型番 | アナログ | 帯域 | デジタル | 帯域 | 備考 |
115,060 | SDS1104X-E+OP | 4ch | 100MHz | 16ch | 1Gsps | 4chオシロスコープ+16chロジアナ |
59,800 | SDS1104X-E | 4ch | 100MHz | 0ch | – | 4chオシロスコープ |
39,800 | SDS1104X-U | 4ch | 100MHz | 0ch | – | 4chオシロスコープ(廉価版) |
こちらはオシロスコープで、ロジックアナライザ的な機能がついているものです。
ピックアップしたのはSIGLENTの製品になります。この製品の特徴としてロジックアナライザ的な使い方ができる機能が無料で使えます。オシロスコープ単体ではRIGOLのものが評判がいいのですが、ものによってデコード機能が別売りで3万円ぐらいすることがあります。
個人的には4万円の一番安いものでも十分で、それで足りなくなってから更に上位に買い換えればと思っています。
純粋なオシロスコープであれば、上記の黒いRIGOLとかが人気ですがちょっと高いですよね。
USBオシロスコープ(デコード付き)
価格 | 型番 | アナログ | 帯域 | デジタル | 帯域 | 備考 |
141,900 | PicoScope 3403D MSO | 4ch | 50MHz | 16ch | 1Gsps | USB4chオシロスコープ+16chロジアナ |
70,290 | PicoScope 2206B MSO | 2ch | 50MHz | 16ch | 1Gsps | USB2chオシロスコープ+16chロジアナ |
61,490 | PicoScope 2405A | 4ch | 25MHz | 0ch | – | USB4chオシロスコープ |
53,790 | PicoScope 2205A MSO | 2ch | 25MHz | 16ch | 500Msps | USB2chオシロスコープ+16chロジアナ |
USBタイプのオシロスコープです。いろいろ安いのもあるのですが、基本的にデコード機能がついているものは非常に少ないです。PicoScopeシリーズはプロ向けのシリーズで、アプリケーションがよくできているみたいです。基本的に最上位機種と入門機種で同じアプリケーションが使えるので帯域やチャンネルの差のみで、デコードなどの機能差はありません。
ただし、ちょっとシリーズが多すぎて帯域やチャンネル数などで細かく値段が違うのでなかなか選びにくい気もします。
ロジックアナライザ
価格 | 型番 | アナログ | 帯域 | デジタル | 帯域 | 備考 |
20,260 | ZEROPLUS LAP-C(16064) | 0ch | – | 16ch | 100Msps | 16chロジアナ |
1,000 | EZ-USB FX2LP | 0ch | – | 8ch | 16Msps | 8chロジアナ |
一般的なロジックアナライザです。なぜ最後に紹介するかというとあまりおすすめしないからです。
ZEROPLUSのロジックアナライザは定番でして、私も2台持っています。かなり使いやすいのですが、標準だとアナログのデータを見ることができません。1万2800円でアナログを追加するオプションがあるのですが、LAP-C(16032)につけるとアナログ1チャンネルに、デジタル7チャンネルと微妙なスペックとなります。
オシロスコープを持っている人などが、純粋なロジックアナライザがほしい場合にはZEROPLUSはおすすめですが、オシロスコープを持っていない人であればLogicかAnalog Discovery 2が便利だと思います。
EZ-USB FX2LPは上記のようなUSB開発ボードになります。そこそこ高速なGPIOとして利用できますので、ロジックアナライザとしても利用可能です。
上記のものも中身はEZ-USB FX2LPになります。実は最初に紹介したLHT00SU1も実はEZ-USB FX2LPにアナログチャンネルを追加したものになります。
純粋なロジックアナライザとして、低速な信号を調べるのには十分ですが個人的にはアナログ対応しているものを持っていると便利だと思います。
アナログの必要性
ロジックアナライザな基本的には正常に動かないときに利用します。デジタル信号が対象になるので、アナログは必要ないように思えますが、実際にはアナログ信号を確認しないと解決できない問題が多いです。
よくある場合としてI2Cなどの場合に信号線を伸ばすと信号がなまりやすくなります。抵抗値などでデジタル信号にきれいになるように調整が必要です。このときオシロスコープなどのアナログを見る機材が必要なのですが、アナログとデジタル両方の信号をみながら作業したほうが安全です。
もちろん安いUSBオシロスコープと、EZ-USB FX2LPの組み合わせでもある程度は解決できます。使い分ければいいのですが、とりあえず一緒に見ることができる機材があると本当に楽です!
例えば上記だと上がアナログ信号で、下がデジタル信号になります。全部アナログ信号で確認する方が楽な場合もありますが、まずはデジタルで動作確認して気になったところをアナログで調べる方法でいまは調査しています。
一覧
価格 | 型番 | アナログ | 帯域 | デジタル | 帯域 | 備考 |
141,900 | PicoScope 3403D MSO | 4ch | 50MHz | 16ch | 1Gsps | USB4chオシロスコープ+16chロジアナ |
120,000 | Logic Pro16 | 16ch | 50Msps | 16ch | 500Msps | アナログ対応16chロジアナ |
115,060 | SDS1104X-E+OP | 4ch | 100MHz | 16ch | 1Gsps | 4chオシロスコープ+16chロジアナ |
84,280 | Logic Pro8 | 8ch | 50Msps | 8ch | 500Msps | アナログ対応8chロジアナ |
70,290 | PicoScope 2206B MSO | 2ch | 50MHz | 16ch | 1Gsps | USB2chオシロスコープ+16chロジアナ |
61,490 | PicoScope 2405A | 4ch | 25MHz | 0ch | – | USB4chオシロスコープ |
59,800 | SDS1104X-E | 4ch | 100MHz | 0ch | – | 4chオシロスコープ |
53,790 | PicoScope 2205A MSO | 2ch | 25MHz | 16ch | 500Msps | USB2chオシロスコープ+16chロジアナ |
48,500 | Logic8 | 8ch | 10Msps | 8ch | 100Msps | アナログ対応8chロジアナ |
45,000 | AnalogDiscovery2 | 2ch | 30MHz | 16ch | 100Msps | 16chロジアナ+2chアナログ |
39,800 | SDS1104X-U | 4ch | 100MHz | 0ch | – | 4chオシロスコープ(廉価版) |
20,260 | ZEROPLUS LAP-C | 0ch | – | 16ch | 100Msps | 16chロジアナ |
20,100 | ADALM2000 | 2ch | 100Msps | 16ch | 100Msps | 16chロジアナ+2chアナログ |
5,749 | LHT00SU1 | 1ch | 3MHz | 8ch | 16Msps | 8chロジアナ+1chアナログ |
1,000 | EZ-USB FX2LP | 0ch | – | 8ch | 16Msps | 8chロジアナ |
全部の商品を値段でソートしています。ちなみに価格に関しては秋月電子やモノタロウなどで購入した場合の比較的安価なものを持ってきています。Amazonだとちょっと高いものが多いですね。
まとめ
時間に余裕がある人は3週間ぐらい届くのに時間かかりますが、AliExpressなどでLHT00SU1を購入するのをおすすめします。大抵のことはこれで問題ありません。性能的に物足りなくなってからちゃんとしたのを購入するのが良いと思います。
Analog Discovery 2が本当はおすすめですが、個人的には高くて手がでません。4万円予算があればオシロスコープを買うと思います。。。
オシロスコープは1チャンネルでもあると便利ですが、実際のところ私は低速の信号を見ることが多いので、LHT00SU1の3MHzで十分な事が多いです。アナログセンサなどの出力もLHT00SU1でみちゃう事が多いです。
作業机があって、オシロスコープとロジックアナライザがすぐに使える状態の場合には個別にあったほうが便利だと思いますが、この辺は作業環境と、見る信号によってわかると思います。
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