マイコン時代の電子回路入門 その6 トランジスタの基礎

概要

前回までで基礎的なI/Oを説明しましたので、今回からは回路に関することを取り上げたいと思います。原理を理解しておくとトラブルのときにわかりやすいトランジスタを説明します。

トランジスタとは?

トランジスタは電流を増幅する部品になります。電流を増幅することができると電圧も増幅可能なのですが、今回はアナログ的な制御ではなくてスイッチ的な制御の使い方をメインに説明したいと思います。

ざっくりした概念ですが、Bの端子に3mAを流すと、CからEの端子に約100倍の300mAが流れるような部品になります。この場合は100倍ですが、トランジスタによって倍率が異なります。70倍から700倍ぐらいまでと非常に幅があります。

トランジスタにも種類があり、バイポーラトランジスタとMOSFETの2種類がよく使われます。ただし、一般的にトランジスタというとバイポーラトランジスタで、MOSFETはMOSFETと呼ぶことが多いです。

https://akizukidenshi.com/catalog/c/c/

たとえば秋月電子さんでもトランジスタのところにはBJT(Bipolar Junction Transistor)のバイポーラトランジスタが並び、FETのところにMOSFETがあります。細かい分類だといろいろあるのですが、今回は一番一般的なバイポーラトランジスタを取り上げます。

バイポーラトランジスタとは?

左がNPNトランジスタ、右側がPNPトランジスタになります。矢印の方向が違うのですが、内部的な構造も違っています。

NPNトランジスタの概要

コレクタ、ベース、エミッタという端子がありNPNの順で並んでいるのでNPNトランジスタと呼びます。

PとNはダイオードの構造と一緒で、PからNに向かって流れる方向のダイオードになっています。そしてPからどちらかのNに電流が流れると、NとNの間でも電流が流れることになります。

概念図ですが、ベースにはダイオードがあり0.7V以上の電圧がかかるとコレクタ、エミッタ間のスイッチを押して疎通します。ベースから流れる電流に応じてスイッチが押され、ベースの電流の100倍ぐらいがコレクタ、エミッタ間に流れることになります。

NPNトランジスタの制御は電流なのですが、最初にダイオードが入っているように見えるので0.7V前後の電圧がダイオードを乗り越えるために必要となります。

コレクタとエミッタの役割なのですが、コレクタからエミッタ方向に大量の電流が流れやすくなっています。逆に使っても電流は流れるのですが、流れる量は減るようです。

上記の回路で実験してみたいと思います。

赤がベースの電圧で、青がそこに流れている電流になります。0.6Vから0.7Vぐらいから電流が流れて、ピークでは1.9mA前後流れています。

コレクタ側の抵抗に流れている電流をみてみると100倍弱の160mA強です。

さらにエミッタ側の電流も追加してみました。少しわかりにくいですがエミッタ側には2mAぐらい多く電流が流れていました。

バイポーラトランジスタの特徴なのですが、ベースに流れた電流もエミッタに流れています。そのためコレクタからとベースからの合算した電流がエミッタに流れます。このベースに流れる電流は基本的には制御のための電流なので無駄な電力になります。省電力な回路の場合にはバイポーラトランジスタではなく、もう少し省電力なMOSFETを使うケースが増えてきています。

NPNトランジスタのスイッチング回路

上記が典型的なNPNトランジスタを利用したスイッチング回路になります。ベースに電流を流すと、エミッタからコレクタに電流が流れます。

このときの分析結果です。先ほどと同じように0.7V前後から電流が流れ始めています。よく見てみるとベースに流れているSIN_INは3.3Vですが、R2に流れている電圧は5Vになります。このように電圧が違うものを制御する場合にトランジスタのスイッチング回路が使われています。

ただし、必ずしも電圧が違っている必要はなく、マイコンからは30mA程度しか流せないとしても、トランジスタのスイッチング回路をつかえば別の電源から30mA以上の電流を流す回路を作ることができます。

スイッチング回路で重要なのは、上記の立ち上がりと、立ち下がりの赤い部分を極力使わないことです。ここはベースに流れている電流に比例して、コレクタからエミッタに電流が流れている部分です。一定以上流れてしまうとそれ以上流れない平らな電流になります。この平らな部分をなるべく使うようにしましょう。

アナログ的な制御では、この比例する部分を使いますが、制御が難しいのでスイッチング回路では飽和した四角い部分を使います。

先程は正弦波をベースに流していましたが、パルスでの制御であれば四角い波形になります。また、スイッチング回路の場合にはトランジスタの倍率を定格の半分以下で使うのがおすすめです。70倍から200倍のトランジスタであれば50倍以下で利用してみてください。

つまりベースに2mA流すのであれば、コレクタとエミッタ間は100mA以下の負荷を接続します。

大電流を流す場合

さて、抵抗値を修正してベースに5mA前後、コレクタからエミッタ間に100mA程度流れる回路にしてみました。

しかしさらに大きい電流を流したいときには多段にする方法があります。

多段にすることで、1段目のQ1で増幅した電流を2段目のベースに流すことでR3に大電流を流すことが可能になります。

上記の場合最初のベースに約5mAを流して、最終的にR3に約960mAを流している回路になります。約192倍になっています。とはいえ、多段は計算が難しいのでMOSFETなどを利用したほうがかんたんです。

NPNトランジスタで負荷の場所

先程は上のコレクタ側に負荷がありまししたが、エミッタ側につけた場合にどうなるでしょうか。実はあまり良くない回路となります。

分析をしてみました。トランジスタの各ピンにかかる電圧になります。ベースは3.3Vの正弦波で、コレクタは5V電源につながっています。エミッタの電圧はなぜかコレクタの5Vではなく、ベースからの電圧に比例しているように見えます。ちょっとこの分析結果が正しいのかはわからないです。

https://fscdn.rohm.com/jp/products/databook/datasheet/discrete/transistor/bipolar/2sd2444kt146r-j.pdf

該当データシートをみてみるとコレクタ・エミッタ飽和電圧は0.3V(300mV)ですので、コレクタとエミッタ間は0.3Vのはずですが、ベースから流れ込んでいる電圧の方が高いからそれを観測しているきがします。

ベースに流れる電流をみてみると5mAから0.22mAに減っています。ベースからの電流はエミッタ経由でGNDに流れるので、エミッタ側に負荷があるとベースに流れる電流も減ってしまいます。

結果、コレクタ側だと負荷に100mAぐらい流れた回路が50mA程度と流れる量が減っています。ngspiceの分析結果は変な使い方をするとずれることがあるので、すべての結果が正しいかは微妙なところですが、スイッチング回路では負荷はコレクタ側の電源の近くに置く必要があることがわかりました。

抵抗入りNPNトランジスタ

https://akizukidenshi.com/catalog/g/gI-12469/

最近はトランジスタをスイッチング回路で使う事が多いので、抵抗入りのトランジスタが販売されています。BRT(Bias Resistor Built-in Transistor)と呼ばれ、抵抗内蔵トランジスタやデジタルトランジスタと表記されることがあります。上記はR1にベースの抵抗、R2にプルダウン抵抗がはいっています。R1の役割はベース電流の制御で、マイコンなどから直接出力してもR1抵抗があるので電流が流れすぎることがありません。

R2の役割はちょっとむずかしいのですが、マイコンを再起動した直後などにIOがハイインピーダンスになる場合があります。そのときにベースに電圧が残っているとトランジスタが動いてしまうことがあります。R2はベースに残っている電荷を抜き取る役割の安全装置になります。

R2は必須ではなく、もし誤動作しても問題がないような場合には省略することができます。BRTでもR2がないものもあります。R1とR2は利用するマイコンの電圧や流してもよい電流などによって複数用意されています。

さて、トランジスタの下に反転をするインバータが書いてあります。これは入力を反転するインバータとしてトランジスタが使えることを表しています。

こんな回路を用意しました。

分析結果です。赤がINで3.3Vのパルスになります。INがHIGHの場合にはベースに電流が流れますので、コレクタからエミッタにも流れるためOUTの出力は0V近くまで下がっています。INがLOWの場合には、コレクタとエミッタ間は流れないので5VがそのままOUTに出力されています。

このように電圧でみるとINとOUTはインバータとして反転して動くことになります。この場合INがHIGHになった場合R2に流れる電流は無駄ですので、この回路のように30Ωだと大電流が流れてもったいないです。

PNPトランジスタの概要

NPNとPNPの違いですが、ピンの名前は一緒でPとNが逆になっています。エミッタの矢印が内側に向いています。

そして、流れる方向が逆になります。ベースから引っ張る方向で電流を流すと、トランジスタで増幅された電流がエミッタからコレクタに向かって流れます。

こんな回路になります。NPNとの違いはエミッタに接続されている電源が3.3Vに変更されています。

分析結果をみてみると、赤の正弦波が2.6V以下の場合にベースに電流が流れています。これは3.3Vから0.7V低い電圧になります。

コレクタに流れている電流も同じです。つまり、エミッタの電圧よりベースの電圧が0.7V下がるとトランジスタからベース方向に電流が流れていることがわかります。

さて、PNPトランジスタのハマりどころなのですが、先程の回路は電源が下にありました。上記の回路では電源が上で下にGNDがあります。なにが違うかというと、上下をひっくり返しています。一般的に電源は上から下に、信号は左から右に流れるように回路図を書くことが多いです。

まったく同じ回路なのですが、書き方によって印象が変わってしまいます。とくにトランジスタは矢印の場所で判断する必要があるので、電源が矢印に接続されていることを確認しつつ考えてみてください。基本的な考え方はNPNとPNPは同じで、方向が違うだけになります。

PNPトランジスタで負荷の場所

こちらはNPNトランジスタと同じなのですが、エミッタ側に負荷をいれてしまうとベースに流れる電流が減ってしまいます。そのためスイッチング回路ではコレクタ側に負荷を置くのが一般的な利用方法になります。

抵抗入りPNPトランジスタ

https://akizukidenshi.com/download/ds/unisonic/DTA114E.PDF

こちらもハマりポイントです。GND(+)という表記があります。これはGNDではなくて、ここが0Vになります。先程の回路上でのGNDは-3.3Vになります。

https://akizukidenshi.com/download/ds/unisonic/DTA114E.PDF

データシートを確認してみても、動作電源がマイナスになっています。NPNトランジスタはプラスの電圧で、PNPトランジスタはマイナスの電圧で表記されています。

データシートの回路は上記のような使い方をあらわしています。3.3Vからプルアップ抵抗としてR2が使われています。この場合ベースに接続されているマイコンなどがハイインピーダンスでも、トランジスタが動作しない3.3Vのベース電圧になります。

また、PNPトランジスタの使い方として、ベースに接続するマイコンがオープンドレイン出力でも利用できるメリットがあります。LOWに落とすとトランジスタに流れ、HIGHでハイインピーダンスにするとプルアップ抵抗によりトランジスタには流れなくなります。

一般的な回路図の書き方だと上記になります。CADの初期状態はエミッタが下にあることが多いです、ただし、回路図では上下反転させて使うことが多いです。教科書などはものによって違います。。。

PNPトランジスタは向きを間違えやすいので、矢印の方向に注意してください。そしてマイナス電圧なのか、普通の電圧なのかも注意して確認する必要があります。

NPNとPNPトランジスタの使い分け

オープンドレインで使う場合にはPNPトランジスタでしか使えません。とはいえ、マイコンでオープンドレイン出力しかないピンは珍しいので、どちらを使っても構わない場合が多いです。

価格的にはNPNの方が安い場合が多いので、NPNトランジスタが使われる場合が多いです。

あとは負荷をつなげる場所の違いになります。コレクタ側に負荷を接続するのが基本となりますが、NPNだとコレクタに接続した負荷の先が電源、PNPだとGNDになります。PNPだとトランジスタから電流を負荷に流して、そのままGNDに接続すればいいので配線が楽です。NPNの場合複雑な回路の負荷の場合にはトランジスタのコレクタまで配線するのが大変な場合があります。

個人的にはNPNトランジスタで設計をして、どうしようもない場合にPNPトランジスタも検討するのがよいかなと思っています。

また、PNPトランジスタだと、電源がエミッタからトランジスタを通過してからコレクタの先にある負荷に接続されます。ここでのロスはあるはずですので、特性は直接電源に接続されているNPNの方がよいと思います。

まとめ

個人的にはバイポーラトランジスタはベースに流れる電流を計算する必要があるため、大電流を流す用途ではMOSFETを使ったほうが楽だと思います。電圧が違うものを駆動させる場合や、少電流でよい回路などではMOSFETよりノイズに強かったり、安価だったりするメリットがあると思います。

次回はMOSFETの解説をする予定です。

続編

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