マイコン時代の電子回路入門 その7 MOSFETの基礎

概要

前回はバイポーラトランジスタの基礎をやりました。今回はMOSFETの基礎になります。基礎が終わったところで実際の回路での使い方などをやっていく予定です。

MOSFETとは?

FETはField effect transistorの略で、電界効果トランジスタです。つまりトランジスタの一種になります。電界効果とはバイポーラトランジスタのように電流で制御するのではなく、電圧で制御するもののようです。

MOSはMetal Oxide Semiconductorの略で、CMOSなどのMOSです。CMOSはMOSFETを組み合わせて作ったものであり、IC的な動きをするものになります。

つまりのところ、MOSFETとはMOS型という製造方法で作られた電圧で制御できるトランジスタです。もう少し詳しい解説は個別に調べてみてください。ちなみにJFETと呼ばれる接合型(Junction)のトランジスタもあります。

調べるとバイポーラトランジスタはバイなので2種類のキャリアを使った方式で、FETはユニポーラトランジスタで1種類のキャリアしか使っていませんみたいな説明があると思いますが使い方には影響を与えませんのでここでは触れません。

電界効果とか、電圧で制御とかは上記のイメージ図で説明したいと思います。まずMOSFETはバイポーラトランジスタとは構造が違いますのでピンの名前が違います。構造としてはゲートに電圧を出力し、キャパシタを規定電圧以上に充電することでドレインからソースに対して電流が流れるようなスイッチになります。また、特徴としてスイッチの抵抗が低いので、大電流を流しやすいです。

またバイポーラトランジスタにNPNとPNPがあったようにMOSFETにもN型(Nチャンネル、Nch)とP型(Pチャンネル、Pch)がありますので、個別に紹介していきたいと思いますが左がN型で、右がP型になります。

NchMOSFET

回路図とピンの名前は上記の対応になっています。かなりのハマりポイントなのですが、バイポーラトランジスタはわかりやすい矢印の方向だったのですが、MOSFETは逆方向になります。この矢印は流れる方向ではなくて、内部にあるダイオードを表しているようです。そのため、動作するときに流れる方向についてはこの矢印の逆になります。

動作的には上記のようにゲートに電圧を加えると、ドレインからソースに向かって流れる形になります。

https://www.espressif.com/sites/default/files/documentation/esp32_datasheet_en.pdf

マイコンの場合には吸い込みはシンクで、出力はソースでしたがMOSFETの場合には吸い込み側がオープンドレインなどのドレイン、出力側がソースになります。

さて、最小の回路で動作を確認してみたいと思います。

赤がゲートへの電圧で、青が負荷に流れる電流になります。だいたい2VでMOSFETがオンになって負荷に電流が流れています。バイポーラトランジスタは内部にダイオードがあったので0.6から0.7VぐらいでしたがMOSFETはチップによりしきい値の電圧はかなり違います。1V前後から5V以上のものまであるので、高圧で大電流を流すタイプのMOSFETの場合にはマイコンから直接制御できない場合があるので注意してください。

さて、バイポーラトランジスタとの違いですが、一番下に緑の電流が増えました。これはゲートに流れている電流になります。ほぼ0なのがわかります。

拡大をしてみます。ほとんど電流が流れていないのがわかりますが、若干波形が乱れています。ゲートへの抵抗はなくても大量の電流が流れることはありませんが、リンギングなどが発生するのがわかりました。半導体なので、若干漏れ電流があるのですがほぼゲートからの電流は無視していい量になります。

回路で使う上では、上記のようにC1相当の寄生容量がMOSFETにあり、そこの電荷をどのような条件で抜いたり入れたりするのかが重要になります。

上記のような結果になります。わかりやすいように寄生容量をかなり大きくしてあります。赤が入力ですが、寄生容量への充電が青のラインになります。青が2Vを越えたところで負荷に緑の電流が流れています。

実際にはパルスでの制御になりますので、上記のような結果になります。赤が入力で、青に充電しつつ2Vを越えたところで、緑の負荷に電流が流れます。入力がLOWになっても、寄生容量に充電されている電圧が2Vより下がらない限りオフになりません。

PchMOSFET

回路図とピンの名前は上記の対応になっています。Nchとは矢印の方向が逆になっています。

バイポーラトランジスタのPNPと同じようにPchも上下逆さにして使う事が多いです。ソースに電源、ドレインにGNDを接続するためです。矢印が流れる方向とは違いますので向きを非常に間違えやすいです。また、MOSFETは表面実装の部品を使うことが多く、表面実装はピン番号が製品によってかなり違うのでピンの接続を間違えることが頻発すると思います。

Nchとおなじような回路にしてみました。確認する項目として縦にあるダイオードが電源と逆向きに置かれているかになります。

実験結果です。青が入力で、緑の寄生容量に充放電されています。赤い負荷の電流は緑が1V以下のところで流れはじめ、1V以上のところでオフになっています。これはPNPトランジスタと同じように電源が接続されているソースとゲートの電圧差によってスイッチがオン、オフされています。1Vに見えますが、電源3.3Vから2V下がった1.3V前後がしきい値となっています。

バイポーラトランジスタとMOSFETの違い

しきい値

バイポーラトランジスタはダイオードを通過する電圧が重要なので基本的には0.6Vから0.7Vぐらいの電圧差がしきい値となります。負荷への電流上限はベースに流れる電流で制御しますが、その電流は負荷には流れませんので無駄になります。

MOSFETはものによってしきい値の電圧が違います。1V以下のものもありますし、5Vを超えるものもあります。利用前にマイコンで制御可能な電圧かを確認する必要があります。負荷の電流はほぼコントロールできず、基本的にはオンかオフかの制御になります。バイポーラトランジスタに比べて省電力ですが、より高速動作させることが多いこともあり寄生容量の影響がバイポーラトランジスタより大きくなりがちです。

価格

バイポーラトランジスタの方が若干安いですが、個人で使う分にはほとんど気になる差はありません。ただし、抵抗入りはバイポーラトランジスタにしかないことが多いので、部品点数を減らしたい場合には抵抗入りバイポーラトランジスタが便利です。

速度

MOSFETの方が動作速度が高いです。そのため高速通信の場合にはMOSFETを使うことになります。

耐ノイズ

バイポーラトランジスタの方がノイズには強いようです。そのためノイズが多いモーターなどの制御には現在でもバイポーラトランジスタが使われることがあるみたいです。

プルダウン、プルアップ抵抗

入力がハイインピーダンスになったときに出力が不定になっていい場合には両方とも必要ありません。もしくは必ず入力が安定している場合には必要ありません。

個人的には抵抗はそれほどコストではないので、つけておいたほうがいいと思います。とはいえ、自分で実装をする実験基板だと面倒なのでつけない気がします。

参考資料

上記の東芝さんの資料がものすごく充実しています。下の方にあるドキュメントの中にある資料で気になったものを見てみるといいと思います。

いろいろおすすめはありますが「抵抗内蔵型トランジスター(BRT)の基礎」と「MOSFET ゲート駆動回路」の2つはかなり重要です。このドキュメントを読むための基礎知識として前回と今回の記事が役に立つと思います。全部理解する必要はありませんが、流し読みをしてより深く知りたい場合に読み返してみてください。

MOSFET SPICE モデルグレード」も個人的なおすすめになります。ざっくり紹介すると暗号化かかっていないSPICEモデルは精度が低いです。つまりngspiceで使えるモデルは精度が悪いので、全部を信じると危険です。とくに普段使わないような間違った使い方をしたときの結果はあてにならないので、モデルで動いた回路が実際に動くとは限りません。

たとえばMOSFETとかのゲートは今回2Vぐらいの電圧が必要でしたが実際には違います。

https://fscdn.rohm.com/jp/products/databook/datasheet/discrete/transistor/mosfet/bss138bkt116-j.pdf

上記がBSS138のデータシートですが、0.8Vから2.0Vのゲートしきい値電圧になっています。

https://fscdn.rohm.com/jp/products/databook/datasheet/discrete/transistor/mosfet/bss138bkt116-j.pdf

同じデータシートですが、右側がジャンクションの温度としきい値電圧のグラフになります。1.6Vぐらいから1Vぐらいの間にあります。つまり0.8Vから2.0Vのしきい値はワーストとしての値になります。通常はもう少し中央の値になります。

モデルでは一番悪い数値である2.0Vで計算されますが、PchMOSFETとかでプルアップしているゲートの電圧が1.5Vぐらい低下していてもモデル上は影響はありませんが、実際の回路ですと入力に関係なく、常にオンで動いたりぱたぱた状態変化するPchMOSFETになったりする危険性があります。

まとめ

バイポーラトランジスタの基本がわかっていればMOSFETの基本もすぐに理解できると思います。細かい違いは次回以降に実際の使い方を学びながら調べていきたいと思います。

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