概要
前回は市販品の紹介でしたが、今回は電池自体の調査になります。3.2V定格ですが若干3.7Vのリチウムイオン電池と特性が違うので注意してください。
リン酸鉄リチウム(LiFePO4)とは?
ポータブル電源などによく利用されているタイプの電池になります。普通のリチウムイオン電池と比べると寿命が倍以上あるので、長期間利用するバッテリーで最近使われるようになってきました。
最大の特徴としては爆発しにくいことです。ガスが発生したりしないのと、安定している物質のため普通に使っている限りは爆発することがないと思います。
欠点として1本あたりは安いのですが、容量が少ないことです。リチウムイオンバッテリーだと容量が2倍で価格が1.5倍ぐらいになります。寿命が違うので長期的に見るとリン酸鉄リチウム(LiFePO4)の方が安くなります。
容量を確保するために本数を増やすと重くなるので鉛電池が使われていた分野でリン酸鉄リチウム(LiFePO4)への置き換えが進んでいる感じです。
リン酸鉄リチウム(LiFePO4)の特性
上記のサイトに詳しい特性が書いてありました。

公称電圧は3.2Vですが、100%の充電完了電圧は3.65Vとなります。特徴としては3.2Vぐらいの電圧で横ばいで電圧変化が少ないことです。このため電圧から残量を計算することが非常に難しく、少し減りだすとすぐに容量がなくなることとなります。この資料では放電カットオフ電圧は2.5Vとなっています。
過充電
充電完了は3.65Vですが、通常のリチウムイオンバッテリーの充電池に接続すると4.2Vまで充電されてしまいます。過放電で爆発したりガスが発生することは無いようですが、容量が減ってしまうようです。一般的なリチウムイオンバッテリーの充電池を使うと4.2Vまで充電されてしまうので気をつける必要があります。
過放電
2.5Vがカットオフで利用停止となっていましたが、2V以下になると容量が減る危険があるようです。通常のリチウムイオンバッテリーよりは過放電に強いようですがなるべく2.5Vぐらいまでで利用を停止するのが良さそうです。
BMS(Battery Management System)
バッテリー管理システムは保護回路と呼ばれているものです。過放電と過充電を保護してくれる回路になります。
上記でLiFePO4を含むプロジェクトを検索して、利用されているICを確認してみました。
上記のHYCON Tech HY2112が定番のICみたいです。
型番 | 過充電検出電圧 | 過放電検出電圧 | 放電過電流検出電圧 |
---|---|---|---|
HY2112-AB | 3.75V | 2.1V | 100mV |
HY2112-BB | 3.75V | 2.1V | 150mV |
HY2112-CB | 3.75V | 2.1V | 200mV |
HY2112-EB | 3.9V | 2.1V | 200mV |
HY2112-GB | 3.75V | 1.825V | 100mV |
HY2112-HB | 3.65V | 2.5V | 200mV |
判定をする電圧が違うようでして、一番下のHY2112-HBがバッテリー保護のぎりぎりで、HY2112-CBあたりが定番の電圧な気がします。

データシートを見てみると、このICではバッテリーの電圧を監視しており、マイナス側に接続した外付けのMOSFETを2つ使って、過充電の電圧より高くなったら充電方向のMOSFETを遮断、過放電の電圧より低くなったら放電方向のMOSFETを遮断することで範囲無いの電圧になるようにしてあります。
充電時には定格のHY2112-HBが必要な気がしますが、この保護回路の他に充電回路があり、そこが3.65Vを生成しますので誤差を考えて少し緩めの値を設定している気がします。
充電回路
充電用にはCN3058Eを利用することが一般的みたいです。

回路図を見てみると上記の利用例がありました。バッテリーの温度を監視しながら充電中と充電完了のLEDを光らせることが可能です。VINは3.8Vから6Vが利用でき、USBなどの5Vで充電することが可能です。
ESP32への接続方法
直結
保護回路なしでESP32に接続させます。基本的には非推奨ですが、一番シンプルな接続方法です。懸念点としてESP32は3.6Vまでの入力電圧に対応していますが、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)だと3.65Vまでと少し電圧が高いです。これぐらいであれば許容されることが多いとは思ますが定格外となります。
ただし、充電はできない回路なので、他の充電器で充電した電池を取り外して起動すると3.6V以下に放電されて、定格内で利用できる可能性もあります。またCN3058Eは充電電圧が3.6V(±0.05V)なので実際に充電完了して電圧測定をして3.6V以下であれば問題ないかもしれません。
また、過放電の保護回路がないので、バッテリー電圧をESP32側で確認をして、3Vを下回ったことを確認したらDeepSleepするなどして放電を止める処理が必須となります。
HY2112(保護回路)のみ
直結に比べると過放電に対して自動的に保護してくれるので便利です。最低限HY2112は利用したほうが好ましいとは思います。ただし、充電ができないので直結と同じように他の充電器で充電した電池を取り外して入れ替える運用となります。
CN3058E(充電回路)
充電器のみとして利用する場合には問題ありませんが、過放電が保護できないのでESP32と接続する場合には好ましくありません。
HY2112(保護回路)+CN3058E(充電回路)
HY2112の外側に充電回路を追加したものです。一番好ましい回路となります。USBなどの5Vから充電をしつつ利用をすることが可能になります。ソーラーパネルなどの出力を5V以下に落として充電させることも可能だと思います。
市販品
充電モジュール

上記は充電のみのモジュールです。これだと過放電に対して保護できないので別途保護回路が必要になるか、充電器専用回路として利用になります。入力側は5Vソーラーを想定しているモジュールが多く、最初からUSBコネクタが実装されているものは見つけることができませんでした。
保護回路モジュール

緑の3.7V用と、青の3.2V用がありますので3.2V用を選ぶ必要があります。ICが2つありますが片方がHY2112あたりで、もう片方が2回路のMOSFETと思われます。
まとめ
どんな用途で利用するのかによりますが、ソーラーで充電するような場合以外には電池交換でいいかなと思っているので、過放電の保護回路だけあればよいのかなと思っています。
モジュールは購入済みですので、18650バッテリーホルダーと組み合わせてESP32に接続可能な状態に次回以降にしていきたいと思います。
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