ブラウザで基板設計できるEasyEDA入門 その1 雑に作る

概要

いままでKiCADを利用して基板設計をしていましたが、ブラウザ上で利用できるEasyEDAを使ってみることにしました。結構複数のパソコンを利用したりして、KiCadとの相性が悪かったので、どのマシンでも使えるEasyEDAを気に入っています。今回は雑に作ってJLCPCBに注文したところまでです。

EasyEDAとは?

EasyEDA - Online PCB design & circuit simulator
EasyEDA is a free and easy to use circuit design, circuit simulator and pcb design that runs in your web browser.

上記のサイトで、基板製造会社のJLCPCBと同じグループ企業が提供しているブラウザ上で基板設計ができるサービスとなっています。同じくグループ会社であるLCSCで電子部品を選ぶとフットプリントなどで表示されるのでEasyEDAを知っている人はそこそこいるのかもしれません。

ちなみにJLCPCBさんはブログとか書いているとクーポン提供するから紹介してくれと連絡あることが多いですが、Lang-shipでは自腹が基本なので提供を受けていません。

EasyEDAのはじめかた

アカウントを作る

JLCPCBグループですべて共通アカウントとなります。そのためJLCPCBかLCSCのアカウントを持っていればEasyEDAでも利用可能です。ただしEasyEDAは基板データの公開機能があり、そこでユーザー名が表示されるのですが変更ができません。

公開されても無難な名前でJLCPCBに登録していたので、公開するようにEasyEDAで新規アカウント登録を行いました。ちなみにEasyEDAからJLCPCBに連携できますが、ログインしているアカウントが違っていても問題ありませんでした。JLCPCBとLCSCは過去に注文したことがあるので古いアカウント、EasyEDAは公開用のアカウントと使い分けています。

価格

https://easyeda.com/page/pricing

いろいろプランはあるのですが、無料で問題ありません。昔はGitHubみたいに非公開プロジェクトの作れる数が少ないみたいな制限があったのですが、今はなくなりました。

無料から月3千円と一気に値段があがるんですね。

ダウンロードかオンラインか?

svg-battery
Download Center

実はデスクトップクライアントもあります。とはいえ、学校の授業とかで使うのでなければオンライン版がよいと思います。

エディション選択 Std or Pro

トップの右上にある「EastEDA Designer」をクリックすると、エディションの選択画面があります。

Std EditionPro Edition
1. 使いやすく、すぐに始められます1. まったく新しいインタラクションとインターフェース
2. このプロセスは、300 デバイスまたは 1000 パッドの設計規模をサポートします2. 30,000デバイス以上、100,000パッド以上のデザインにもスムーズに対応
3. 簡単な回路シミュレーションをサポートします3. より厳格な設計制約、より標準化されたプロセス
4.学生、教師、クリエイター向け4. 企業向け、よりプロフェッショナルなユーザー向け

ざっくり訳しましたが、スタンダードエディションとプロエディションがあります。ちなみに日本語化されているのはStd Editionのみです。一見Std Editionが良さそうに見えますがおすすめしません。

日本語化が中途半端で、かなりの機能が英語のままなので英語モードで使ったほうがいいと思います。

あとは致命的なのがStd EditionとPro Editionで互換性があまりありません。

1. まったく新しいインタラクションとインターフェース

上記の一文がわかりやすいのですが、Std EditionとPro Editionではかなり操作感が違います。画面構成から設計の手順、キーボードショートカットまですべてが違います。

性能的にみるとStd Editionは簡易版KiCadです。学生向けっぽいですが、機能がちょっと足りていないというか、簡略化した部分が逆にわかりにくくなっています。

Pro Editionは回路シミュレーションがなくなっていますが、その分KiCadに近い操作感や機能になっています。KiCadなど他の回路図設計ソフトを使ったことがある人はPro Editionが使いやすいと思います。

基板を設計してみる

作成物を決める

今回はみんなだいすきな黄色基板の拡張ボードを作ってみたいと思います。左右にピンヘッダが実装できるようになっているので、それを利用してUSBポートを増設します。最初は回路という回路がなくて、ほぼ配線だけをするような基板を作ってみるのが安全だと思います。

サイズを調べる

https://www.aliexpress.com/item/1005005059421229.html

販売ページにデータシートのダウンロードリンクがあるので、ここから最新データシートをダウンロード、、、できない!

404ですね。販売店に聞いてみたら他のブラウザを使ってくれと言われました。。。

これよく調べたら、ダウンロードリンクがhttpなので最近のChromeとかは自動でhttpsのページに切り替えて、そこが対応していないので404になっていたようです。Firefoxだとダウンロードできました。あとはWSLとかでwgetしたほうがいいのかな?

サイズを見つける

これ酷いんですが、細かい寸法がまったくわからないんですよね。とくにこの上下にあるピンヘッダ周りの位置がまったくわかりません。

とりあえず実物を見ながら適当に作ってみたので、作成した基板を見ながら微調整をしていくつもりです。

構想

ピンヘッダで連結をして、USBポートを2つ増設したいと思います。1つはUSBホスト機能用のメス、1つはUSBデバイス用のオスになります。

回路図を書いてみる

単純ですね。ピンソケットで受けて5VとGND、USB D+とD-だけ配線しています。あとはマウント用のホールが右上に4つあります。

PCB設計

すでに注文したのとすこち違っているのですが、こんな感じでKiCadみたいな機能は揃っている感じでした。

2Dの表面プレビュー。

裏面は豪華にGNDのみ。

3Dでのプレビューもあります。ただし、3Dモデルを消すことができません。配線を見たい場合には2Dでみて、3Dは干渉のみを確認する使い分けがいいと思います。

ただモデルによって左側のUSBポートが表示されていません。3Dモデルがあるかは部品によって違うので注意が必要です。そして、この基板は注文済みなのですがすでに失敗が濃厚です。たぶん左側のUSBポートが干渉していて基板を削らないと使えません!

似たようなUSBコネクタを並べましたが、いろいろモデルがあります。

角度をつけるとわかりやすいのですが、一番左は裏側に貫通しています。真ん中は基板にめり込んでいて、一見干渉しているのかわかりません。そして一番右側は3Dモデルがないのでメリコミに気がつけません。

まだ届いていないので検証できていませんが、たぶん干渉しています。。。

こちら注文した基板のガーバーデータです。まだ角丸じゃない基板です。そして微妙に凹んでいるラインがあります。。。んー、やっぱり実データを確認しないとだめだな。JLCPCBの注文時のガーバービュアーだと確認しにくいので見落としていました。これはKiCadのガーバービュアーで確認しています。

注文する

基板設計画面から「Order PCB」で注文できます。

こんな感じで注文画面まで自動的にジャンプします。ここで基板の色などを設定すれば注文可能です。

ちなみに10センチ角までの基板は5枚で2ドルです。送料は一番安いので1ドルなのでどんどん頼んで実物で確認するのがおすすめです。複数頼むと送料上がることがあるので小型の以外は単品注文の方が送料節約できます。

KiCadとの違い

次回以降に使い方のポイントをまとめたいと思いますが、気になったことを書いておきます。

フットプリントではなく品番まで確定して配置する

KiCadは回路図等の抵抗の値などは文字情報のみで、抵抗値が異なってもフットプリント等は同じです。EasyEDAは部品の型番単位で配置して、その部品のフットプリントを使うイメージです。なので抵抗値なども値が違うものをコピーして値だけ変更するのではなく、そのサイズでその抵抗値の部品を探して配置した方が好ましいです。

キーボードショートカットがわかりにくい

まずStdとPro Editionでキーボードショートカットが違います。Proだと1キーではあまりショートカットが設定されておらず、Alt+文字みたいなものが多いです。

SettingのHotkeyにてショートカットの確認ができます。ベースとなるショートカットはAltiumのものを採用しているようでした。

キー概要
G重なった部分から部品を選択する
Alt+Wワイヤー
Alt+F基板の裏表をフリップして入れ替える
Alt+V開始点にビアを売って、ワイヤーの裏表を変える

この中で重要なのがGです。

部品が重なっている場所でGを押すとメニューが出てきて、選択する部品を選ぶことができます。逆に右クリックからはこのメニューがでないので知らないと非常に詰みます。トップメニューにもないので知る方法がないんですよね。

あとはビアもKiCadとはちょっと違います。Alt+Vを押すとビアが打たれます。

カーソルの位置に打つのではなく、開始点にビアが打たれていま引いているワイヤーは逆レイヤの扱いになります。

ベタGNDが自動更新しない

DRCを実行しても自動更新する機能がありません。そのためなにかを変更したら自分で「Rebuild Copper Regin」を押して更新する必要があります。

不意に塗りつぶし面を移動してしまうと、すべて消えてしまい戻し方がわからなくなるので覚えておく必要があります。うっすら見える青い線が塗りつぶし面になります。

回路図にない部品を配置できない?

KiCadはマウント用の穴とかは回路図に登録しないで、基板に直接配置することが多いと思います。今のところEasyEDAで回路図にない部品を基板に配置する方法がわかっていません。

KiCadは簡単な回路などは回路図なしでかけたのですが、EasyEDAは回路図に一度配置する必要がありそうです。

デフォルト単位がmil

ここのプルダウンで変更できます。設定画面にあると思ったら画面上にありました。定規とかもここの設定なので初期はmilで表示されて、プロパティからmmに変更していましたがあとで気が付きました。線の太さとかもここの設定でデフォルトが10milとかの設定になっています。

オートバックアップが微妙

オートセーブがあるのですが、動きを見ている限りちょっと微妙な感じです。大きく変更をしたところではなく、継続時間みたいです。

手動で保存したほうが安全です。とくに基板を注文したときには保存しておきましょう。今回製造を依頼した基板データはすでに編集しちゃってありません。。。

まとめ

ちょっと癖があるのと、日本語情報がすくないのでとっつきにくいです。しかし使い慣れてしまえばわりとありかなという印象。よくできているのと、パソコンを選ばないのは非常に便利です。

ただ、部品の選び方は結構難しくて、いろいろ試行錯誤しながら選定をする必要があります。次回以降はもう少し基板製造までの手順を詳しく解説していく予定です。

続編

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