Espressif(ESP32他)の製品群を調査する

概要

ESP32のデータシート読み直そうと思ったところで、商品群も把握し直したほうがよいと思い、調査してみました。

主にEspressifの商品群を調べています。

シリーズとしてのESP32

Espressifでは以下の3シリーズを販売しています。

ESP32シリーズ

Espressif社が開発している商品であり、ESP32の中にはCPUやメモリなど最低限必要なものをセットにしたものです。

  • Xtensa® 32ビット LX6 マイクロプロセッサー 最高240MHz
  • 448 KBのROM
  • 520 KBのSRAM
  • 8 KB of SRAM(RTC FAST Memory)
  • 8 KB of SRAM(RTC SLOW Memory)
  • 1 Kbit of eFuse
  • Wi-Fi & Bluetoot

商品によってちょっと違いますが、上記は最低限搭載しています。たんにESP32といった場合にはシリーズ名なのか、特定の商品なのかは判別できません。

シングルコアのSoC以外、基本的にはデュアルコアになります。

ESP32-S2シリーズ

まだ未発売の商品ですが、別シリーズが発表されています。

  • Xtensa® 32ビット LX7 マイクロプロセッサー 最高240MHz
  • 128 KBのROM
  • 320 KBのSRAM
  • 8 KB of SRAM(RTC FAST Memory)
  • 8 KB of SRAM(RTC SLOW Memory)
  • 4 Kbit of eFuse
  • Wi-Fi
  • Full speed USB OTG

コアプロセッサがLX6からLX7に変更されています。これに伴いコプロセッサーも変わり、これまでのULPから、RISC-Vベースのもう少し一般的な命令が使えるようになりました。こちらのシリーズはシングルコアしかありません。

また、Bluetootがなくなり、その代わりにUSBが使えるようになっています。

まだ販売されていないので、今後どうなるかはわかりませんが急激にESP32-S2に変わることはないと思いますが、USBが使いたい場合には選択肢に入りそうです。

ESP8266/ESP8285シリーズ

ESP32の前に販売されていたシリーズです。

  • Xtensa® 32ビット LX106 マイクロプロセッサー 最高160MHz
  • 160 KBのRAM
  • Wi-Fi

Wi-Fiが利用でき、安価なシリーズです。ESP8266とESP8285はフラッシュメモリを内蔵しているかで、基本的な機能は一緒です。

SoCとしてのESP32

SoCとはSystem-on-a-chipの略で、ESP32のようにプロセッサーの他にメモリなどをセットしたものを言います。

ESP32シリーズには複数のSoCがあり、用途に合わせて使い分ける必要があります。基本的な機能は同じことが多いのですが、細かい動作が違うので、データシートを確認する場合には気をつけてください。

ESP32-D*系列

一番標準的なESP32のSoCです。通常使うESP32はこの系列を利用していることが多いです。複数種類があり、チップのサイズが違ったり、フラッシュメモリが内蔵されていたり、製造工程が変わったりしています。

フラッシュメモリは基本的には内蔵されていないものがありますが、一部内蔵しているSoCも存在しています。フラッシュメモリの容量とサイズ以外は基本的に同じ動きをすると思います。

ESP32-S0*,ESP32-U*系列

シングルコアのESP32です。ESP32-S0WDしかなかったのですが、フラッシュメモリが内蔵されているESP32-U4WDHが増えました。ESP32-S0*とESP32-S2は間違いやすいので注意してください。ESP32-Sって商品もありますが、中身はESP32-D*系列です、、、

シングルコア版はあまり採用している例を見たことはありません。

ESP32-PICO-*

ESP32-D*を小型化したSoCです。M5StickCにはESP32-PICO-D4が利用されています。小さい以外にはESP32-D*と特に機能差はありません。

ESP32-PICO-V3が2020年1月に追加されましたが、基本的な機能は同じですが、次で触れるモジュール化に対応したものになります。

PICOは厳密にはSoCではなく、SiP(System in Package)と呼ばれる、複数のチップをパッケージ化したものみたいです。ESP32系のSoCとフラッシュメモリなどを内部で結線して、一つのチップにパッケージ化してあるからだと思いますが、あまり気にしなくても良いとは思います。

ESP32-S2

まだ未発売のSoCです。シングルコアでROMやSRAMもESP32-D*系列より小さいです。ESP32とは別系列の商品群です。

特徴としては、Bluetootがなくなり、かわりにUSB OTGが搭載されており、USBが利用できるようになっています。あとはメインコア以外のコプロセッサーがULPからRISC-Vベースの命令セットに変更になっています。

ESP8266/ESP8285

こちらはESP32ではなく、ESP32の前に発売したSoCで、ESP32とは別系統の商品群です。

シングルコアでよい用途で、Wi-Fiを利用したい場合には非常に安いので最適です。しかしながら、日本だとESP32との価格差があまりないので採用例は少ないです。

ESP8266にフラッシュメモリも内蔵させたのがESP8285になります。

モジュールとしてのESP32

ESP32同等のものが必要なときには、SoCを利用しなくても自分でLX6 マイクロプロセッサーとメモリなどを実装すれば、理論上動きます。しなしながらそこから準備するのは面倒なのでSoCを利用しています。

モジュールとは、SoCの他に必要となる部品を追加し、さらにパッケージ化した製品です。フラッシュメモリが内蔵していないSoCではフラッシュメモリも追加し、アンテナなどの最低限必要な物がパッケージ化しています。

一般的に日本で利用しているのはモジュールになります。これは無線機能を使う場合には、技適を取得する必要があります。(厳密には無線設備の工事設計認証など)

技適を取得する場合には、モジュール単位か、製品単位で取得する必要があります。M5Stack社は製品単位で取得しているので、新しい製品が出るたびに検査をして取得しています。(厳密には同じ形の製品は、無線まわりを共通化して技適を取得しています)

検査自体非常にお金がかかるので、一般人には難しいです。そのため無線部分をモジュール化して、モジュール単位で技適を取得したものがあります。

技適取得済みモジュールを使えば、モジュールを自分の好きにカスタムはできないですが、かんたんに利用することができます。

一般的に技適取得モジュールは、汎用的にする分、少し大きくなるのでM5Stack社は自社で製品に最適なモジュールを作って、製品単位で技適を取得しています。

Espressif ESP32-WROOM-32*

ESP32-WROOM-32D Wi-Fi + BLEモジュール
スイッチサイエンス
¥1,200(2024/04/19 02:23時点)

一番標準的なESP32モジュールです。ESP32-D*系列のSoCを利用したモジュールです。日本でESP32を使う場合には基本的にはこのモジュールが多いです。アンテナが外付けか内蔵かで後ろの型番が少し違いますが、それ以外は基本的に同じ機能です。

Espressif ESP32-WROVER*

ESP32-WROVER-B Wi-Fi + BLEモジュール
スイッチサイエンス
¥1,400(2024/04/19 02:24時点)

ESP32-WROOM-32モジュールに8MBの外付けPSRAMを増設したものです。PSRAMはモジュールの外に増設することも可能ですので、このモジュールを採用しなければ行けない理由はありませんが、PSRAMを使う場合にはESP32-WROVERを利用したほうが楽ではあります。

PSRAMを内蔵している分モジュールのサイズは大きくなっています。またこちらもアンテナが外付けか内蔵かで後ろの型番が少し違っていますが、それ以外は基本的に同じ機能です。

Espressif ESP32-SOLO-1

ESP32-S0*系列のSoCを利用したモジュールです。シングルコアですのでESP32-WROOM-32*系のモジュールより安いです。数十円の差なので趣味の電子工作ではほとんど利用されていません。

Espressif ESP32-PICO-V3-ZERO

現在未発売のESP32-PICO-V3のSoCを搭載したモジュールです。小型用とのESP32-PICO-D4のSoCはモジュールが販売されていなかったので、別SoCでモジュールの販売をするようです。詳細はまだ発表されていないのでわかりません。

機能的にはESP32-PICO-D4をモジュール化したものと変わらないようです。

Espressif ESP32-S2-WROOM/ESP32-S2-WROVER

現在未発売のESP32-S2のSoCを搭載したモジュールです。WROVERはPSRAMを搭載しています。

ESP32-S2のSoC自体が大きいので、WROVERでもWROOMでもサイズは変わりません。

Espressif ESP-WROOM-02*/ESP-WROOM-S2

ESP8266EXのSocを搭載したモジュールです。S2の方はESP32に近い使い方ができるモジュールですが、技適を取得していないので日本国内では利用できません。

ESP-WROOM-02は技適を取得しているので、若干採用例がありますが150円程度の金額差ですので趣味の電子工作ではESP32を利用することが多いようです。

Ai-Thinker ESP32-S

去年の年末に技適を取得したモジュールです。アンテナ周り以外はESP32-WROOM-32と互換性があるようです。外部アンテナを利用する場合にはアンテナ端子の横にある0Ωの抵抗を外す必要があるようです。

ESP-SのSはシングルコアのSではないので注意しましょう。

ESP32-WROOM-32より安いため、海外では利用例が多いモジュールですが、国内では出回っていませんでした。ただ技適を取得しましたが、まだ技適の表示されているモジュールが出回っていないため、日本では利用することができません。

この他にオーディオ周りを強化したESP32-A1Sモジュールもありますが、こちらもまだ技適やFCCを取得していないようでした。

Ai-Thinker以外にもモジュールを作成しているメーカーはありますが、技適を取得しているものはなかったようです。

ESP-07S/ESP-12F

ESP8266のSoCを採用したモジュールで、技適を取得しているものが何個かあります。しかしながら一般には販売されていないようでして、手に入れることはできません。これ以外にESP8266のSoCを採用したモジュールは、いろいろな形のものが存在しています。

ESP8266のSoCは基本的に製品単位で技適を取得しているパターンが多いですので、モジュールで使う場合にはESP-WROOM-02*系モジュール一択となります。

ボードとしてのESP32

ESP32のSoCやモジュールを搭載したボードをESP32と呼ぶ場合があります。一般的に趣味で利用する場合にはモジュールではなく、ボードなどの製品を購入することが多いと思います。

一般的には書き込み用のUSBシリアルや書き込み回路、電源周りの回路、外部接続用の端子などが搭載しています。

Espressif ESP32-DevKitC

Espressif純正 ESP-WROOM-32D開発ボード お得な2個セット ESP32-DevKitC-32D
マイクロテクニカ
Espressif社純正のESP32-DevKitC-32Dボード 送料を考慮したお得な2個セット
ESPr Developer 32
スイッチサイエンス(Switch Science)
電池種別 :電池は別売りのため別途ご購入ください。

ESP32-WROOM-32のモジュールを搭載したリファレンス設計のボードです。基本的にはこのボードを参考にして、製品などが設計されています。

Espressif社の純正ボード以外にも、スイッチサイエンスさんのESPr® Developer 32や、DOIT型の開発ボードなど、いろいろなボードが販売されています。

サイズや、外部に出ているピン数やレイアウトなどが違うことがあるので注意してください。

Espressif ESP-WROVER-KIT

ESPr Developer(ピンソケット実装済)
スイッチサイエンス(Switch Science)
電池種別 :電池は別売りのため別途ご購入ください。

ESP32-WROVERのモジュールを搭載したリファレンス設計のボードです。こちらはちょっと高いので、あまり普及していないようです。

Espressif ESP32-PICO-KIT

ESP32-PICO系のSoCを採用したリファレンス設計のボードです。こちらはモジュールではなく、SoCを採用しているので、このボード自体で技適を取得しています。

しかしながら、技適の表示付きボードがまだ出回っていないので、日本で利用することはできません。(厳密には技適の特例制度を利用することで半年まで利用可能です)

Espressif ESP32-S2-Saola

現在未発売です。ESP32-S2のモジュールを利用したリファレンス設計のボードです。

Espressif ESP8266-DevKitC

ESP-WROOM-02のモジュールを利用したリファレンス設計のボードです。あまり販売しているのを見たことがありません。スイッチサイエンスさんのESPr® Developerなどが国内では定番だと思います。

Espressif その他のボード

Espressif公式ESP32-LyraTオープンソース音声オーディオWiFi Bluetooth開発ボード、タッチ式物理ボタンサポートPTZ
Antkay
¥6,315(2024/04/19 10:29時点)
Espressif公式ESP32-LyraTオープンソース音声オーディオWiFi Bluetooth開発ボード、タッチ式物理ボタンサポートPTZ

カメラ付きや、オーディオ用途など実はかなりのリファレンスボードを販売しています。技適付きのモジュールを利用しているので、多くは日本でも利用可能です。

しかしながら非常に高価なことが多いので、あまり普及していません。

M5Stackの製品

M5Stack拡張可能なマイクロ制御モジュールWiFi Bluetooth ESP32開発キットArduino LCD用2インチLCD ESP-32内蔵ESP8266 (1セット)
M5Stack
M5Stackは、320 x 240 TFTカラーディスプレイ、microSDカードスロット、スピーカーを備えたコンパクトで便利な開発モジュールです。ESP32を搭載しているため、Wi-FiおよびBluetooth通信を扱え、Arduino環境での開発が可能です。

M5StackやM5StickCなど、いろいろな開発用のボードを販売しています。基本的にはケースに入って、液晶やバッテリーも内蔵していることが多いので、利用しやすいです。

基本的に有名な製品は技適を取得しているはずです。

LilyGo TTGOの製品

M5Stack社と並んで、いろいろな製品を出しています。ケースなしが多いですがとにかく実験的な製品が多いです。

技適付きモジュールを採用しているボードと、独自モジュールのボードがあるので、技適付きモジュール搭載ボードしか日本で利用することはできません。上のVGA付きのボードは技適なしですので注意してください。

個人的な感想で、定量的なものではありませんが、M5Stack社の製品が70%ぐらいの完成度で販売しているとすると、TTGOは60%ぐらいなイメージがあります。。。

LOLINの製品

かつてWeMosブランドで販売していたメーカーです。模倣品が多いですが、正規品は非常に安定している製品だと思います。しかしながら、最近はあまり製品を出していないように思えます。

一覧

シリーズCPUSoCPSRAMモジュールボード
ESP32デュアルコアESP32-D*無しESP32-WROOM-32*ESP32-DevKitC
有りESP32-WROVER*ESP-WROVER-KIT
ESP32-PICO-*無しESP32-PICO-V3-ZEROESP32-PICO-KIT
シングルコアESP32-S0* / ESP32-U*無しESP32-SOLO-1ESP32-DevKitC
ESP32-S2シングルコアESP32-S2無しESP32-S2-WROOMESP32-S2-Saola
有りESP32-S2-WROVER
ESP8266 / ESP8285シングルコアESP8266 / ESP8285無しESP-WROOM-02* / ESP-WROOM-S2ESP8266-DevKitC

ざっくりした早見表です。

まとめ

ブログを書いていて、書き方がブレやすいSoCやモジュール、ボードなどの区分を調べ直してみました。よく理解していないときのBlogではチップなどの表記で逃げていたと思います。

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