概要
上記にて入力電圧と負荷を変更しながら出力電圧を計測する仕組みができたので、手元の1A近くまで流せるLDOで実験をしてみました。
実験手順
- 負荷を0Aから0.1A単位で1Aまで増やす
- 入力電圧を3Vから0.1V単位で5Vまで増やす
- その時の出力電圧を計測する
負荷が11種類で、電圧が21種類なので231回の計測を実施しています。
また、キャパシタを実装していないのと、グランドパターンがないため放熱性能が最悪な環境で実施していますので、LDOの実力を発揮しきれていません。ワーストパターンに近い状態で実施しています。
それほど室温は変わらないと思いますが室温管理もしていませんので、参考程度のデータとしてください。
AP2114HA
購入元
上記の製品になります。SOT-223-3パッケージで比較的スペックのよいものになります。
データシート
出力電圧ごとにデータシートがわかれているのは非常に親切ですね。グラフから読み取る必要があるのものが多いので助かります。ドロップアウトはMAXが750mVでした。
計測結果
前回のグラフと同じですが、緑が少し凹んでいるところがありますがたぶん測定誤差になると思います。リファレンスとしてこのLDOを選びましたが、データ的に安定していてよかったです。縦軸が入力電圧で、横軸が出力電圧になります。
さて、ドロップアウトの数値ですが、簡易的に出力が3Vになったときの入力電圧を採用したいと思います。負荷が低いとそもそも出力電圧が3.3Vにいきませんでした。これは出力側のキャパシタとかがないのがいけない可能性があります。
基本的に一番右側から立ち上がっている線が1A負荷のときですので、このデータで出力が3Vになるのは入力が3.6Vのときになります。簡易的に計測したところ、このLDOは0.6Vのドロップアウトでした。データシート内に収まっているので良かったです。
AMS1117
購入元
Advanced Monolithic Systems社がたぶんオリジナルのだと思います。
データシート
0.8AでMAX1.3Vです。今回1Aまで負荷をかけています。
計測結果
どうにも数値が安定しませんでした。そもそもAP2114HAと同じ設定だとグラフがまったく表示されず、横軸を1Vシフトしています。ドロップアウトは無負荷でも1.25Vで、一番ひどいのだと1.73Vぐらいでした。
おそらく数値がぶれているのは発熱とキャパシタとかがないのが原因な気がします。
UMW AMS1117-3.3
購入元
続いて、同じAMS1117ですがUMW社の製品です。
データシート
負荷別にドロップアウトが表示されています。0.1Aでも1Vはドロップするんですね。
計測結果
こちらも数値がばらけています。ただし無負荷のドロップが1.1Vぐらいなので、Advanced Monolithic Systems社よりいいのかもしれません。1A負荷の数値は取れていません。たぶん熱でやられています。0.9Aのときは1.35Vドロップなので、こちらもオリジナルよりいい特性な気がします。
AZ1117CH-3.3
購入元
上記で購入しました。秋月さんでも取扱があって、秋月さんのESP32開発ボードにはこれを採用していました。
データシート
データシートが出力電圧別だったので親切です。ただしドロップアウトの電圧は1Vを超えているので嫌な予感がします。
計測結果
AMS1117と比べると安定しています。とはいえ無負荷で1.1V、1A時に1.47Vドロップアウトと性能的には微妙です。ただし、このLDOは0.8Aが定格のため1Aを流してはいけません。。。
LDL1117S33R
購入元
上記の製品になります。名前から分かる通り1117系のピン配置になります。たしかスペック検索をして低ドロップアウト品として選定しています。
データシート
2.5V以上のLDOだとMAXが600mVのようです。そしてこのLDOは上限が1Aではなく1.2Aまで流せます。
計測結果
結論からいうと、1117系だとこれが一番おすすめです。無負荷で0.15V、1Aでも0.48Vとドロップアウトがすくなく、グラフも安定しています。
TLV75733
購入元
上記の製品になります。今回唯一のEN端子付きのLDOになります。そしてかなり小さいSOT-23-5パッケージでした。
データシート
かなり細かく条件別にドロップアウトが書いてあります。出力が3.3Vの場合にはMAXでも475mVと優秀です。
計測結果
無負荷で0.15V、1Aで0.55Vとかなり優秀です。ただし、サイズが小さいので排熱はちゃんとしないと数値が安定しない感じでした。グラフにはないですが入力を5V近くにあげたところのデータは荒れています。
これはキャパシタがないのもありますが、グランドパターンに接続させていないので、放熱的にかなり厳しそうな感じでした。データシートより性能がでていないのは発熱が原因かもしれません。
SGM2212-3.3
購入元
なんとlcscには在庫がありませんでした。本物かはわかりませんがAliExpressで購入しています。ちなみにESP32の開発元であるEspressif Systems社の純正開発ボードに採用されているLDOで、今回の本命になります。
データシート
こちらも定格は0.8Aまでで、MAXが450mVと優秀なLDOとなります。
計測結果
安定しているグラフです。無負荷で0.13V、1A負荷で0.77Aと優秀です。ただ定格だと0.8Aで0.62Vぐらいになるはずです。
このLDOも発熱には気をつけないといけないと思います。一定以上の温度になると出力制限がかかって0Aに落ちるなどの動きがありました。こちらもデータシートのスペックがでていないので注意してください。
まとめ
無負荷 | 0.8A負荷 | 1.0A負荷 | LCSC | Digi | 備考 | |
---|---|---|---|---|---|---|
AMS1117 | 1.25V | 1.60V | 1.73V | ¥21.9 | LCSCのBasic Partsだが微妙 | |
UMV AMS1117 | 1.08V | 1.28V | 1.35V | ¥5.1 | \92.0 | 安いがそれなり |
AZ1117CH-3.3 | 1.12V | 1.32V | 1.47V | ¥7.5 | ¥70.0 | 安いがそれなり |
AP2114HA | 0.22V | 0.50V | 0.60V | ¥23.8 | ¥58.0 | バランス型 |
LDL1117S33R | 0.15V | 0.38V | 0.48V | ¥27.4 | ¥173.0 | 1117系ではベスト? |
TLV75733 | 0.15V | 0.46V | 0.55V | ¥30.3 | ¥73.0 | ENが必要であれば! |
SGM2212-3.3 | 0.13V | 0.62V | 0.77V | ¥73.5 | 入手に難あり |
価格はLCSCとDigiKeyの金額になります。SGM2212-3.3は在庫がないので参考価格ですが、AliExpressで購入したものは50個で63.4円ぐらいでした。
SGM2212-3.3を今後使おうと思って50個購入してしまいましたが、実験の結果をみるとLDL1117S33Rが良さそうです。ただDigiKeyで注文するのであればAP2114HAが一番安そうです。
今回はLCSCで入手できるもので選定しています。秋月さんなどだともう少し違うラインナップになると思います。あとは排熱対策とキャパシタを載せていない状態なので条件的には悪い環境で実施しています。絶対的な性能であればDigiKeyなどで200円オーバーのLDOがもっとたくさんあります。LCSCで100円以下で購入できるものだけを対象にしています。
AP2114HAとTLV75733が本当に安定して使えるのかはもう少し実験をしたほうがよいと思いますが、AMS1117はやっぱりだめそうです。
また、データシートのスペック的にはTLV75733とSGM2212-3.3はもう少し性能が高いはずです。排熱的に厳しく、キャパシタを実装していないワーストケースなので注意してください。電圧測定の精度などもかなり悪いです。絶対的な指針ではなく、相対的なばらつきなどを確認するためのデータとなります。
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